ジオ・開田

☆ 開田村の地質・3 ☆

さらに立ち入って、地質時代の世代を追いながら、この村の地質を調べてみましょう。
これについても、前記「島田安太郎著・木曽谷の地質」に詳しく調査記録されていますので、そのなかから開田村に関する部分を抜書させていただきます。
(「註」 島田安太郎先生は昭和22年(1947年)から昭和24年(1949年)まで、開田中学校長として在任され、その間開田村の地質調査を綿密に行い、“木曽谷の地質”という著書に収録されたものです。)

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御嶽山麓にある開田村・三岳村・王滝村の地質
(1)古生層

この地方では、御岳の東側半分の基盤をつくって開田村・三岳村・王滝村池の越北西方の山の尾根附近まで分布している。
古生層をつくる岩石は礫岩・砂岩・粘板岩・チャート・輝緑凝灰岩などである。
礫岩は木祖村・木曽福島町と開田村の町村界大笹山附近の開田村地籍に分布している。
砂岩・粘板岩は古生層分布地全域に亘って分布している。
チャートは開田村では、岐阜県境附近の西野川の西部山地に、北東〜南西方向に二条並行して分布が見られる。
末川流域では西野九蔵から小野原に到る山地を東北東方向に走る露頭があり、これに並行する分布が四条程度見られる。

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チャート1 チャート2
【九蔵峠/展望台付近のチャート】

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(2)中生代の岩石
白亜紀に属するものとしては、堆積岩では礫岩・角礫岩・砂岩・粘板岩などがあり、火成岩類では石英斑岩・上松・苗木型花崗岩などがある。
上松・苗木型花崗岩は開田村では、末川の支流畑福沢の源流附近に小露頭がある。

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(3)新生代
第三期初期と見られる珪長岩・文象斑岩の岩脈は開田村では鎌ヶ峰附近に小露頭を見ることが出来る。
第四期もはじめ頃の先御岳火山活動時代の堆積物には地蔵嶺礫層・川合礫層があり、それにつづく火山岩には地蔵峠安山岩類とかんらん石玄武岩などがある。
地蔵嶺礫層は開田村では長峰峠・藤沢峠・関谷峠・西野城山・地蔵峠などに分布している。
火山岩に属する地蔵峠火山岩類は前述の地蔵嶺礫層の上をおおったり、とりこんだりする形で100〜150mの厚さでのっている。
分布は開田村では藤沢峠・長峰峠・関谷峠・西野川・藤沢川中間の尾根・西野城山・辰ヶ峰・藤屋洞北六山地・末川髭沢中間の尾根・地蔵嶺山地に分布している。
これら地蔵峠火山岩類の起原についてはまだ明確ではないが、北に行くにつれ高度と厚さを増していること、地蔵峠附近や辰ヶ峰では熔岩を観察できる。
辰ヶ峰(標高1816m)の熔岩は100mの厚さを示している。
藤沢峠(標高1774m)附近では軽石流などの上にディサイトを含む泥流が180m以上の厚さをもっている。

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地質年代
絶対年代
事象
先カンブリア時代 冥王代
46億年前
地球誕生。(マグマの海)
40億年前
地球が冷え温度が下る。大気中の水蒸気が雨となって降り、原始の海が誕生。
現在発見されている最古の岩石(38億年前)
太古代
35億年前
海の中でDNAが作られ生命が誕生。
最初の生物は単細胞の生物。
原生代
25億年前
原始的な藻類が誕生。ある種のラン藻類が光合成を行い酸素を作り、大気の組成が変化。
多細胞動物出現。(約6億年前)
氷河時代。(先カンブリア時代末期)
古生代 カンブリア紀
5億7500万年前
生物が爆発的に進化、三葉虫などの骨格をもつ無脊椎動物が海で大繁栄し、多様な生物が出現。
オルドビス紀
5億500万年前
層孔虫、四放サンゴ、魚類が出現。
生物の大量絶滅。(末期)
シルル紀
4億3800万年前
珊瑚礁が発達、腕足類やウミユリが繁栄。
後期に、陸上植物が出現。
デボン紀
4億800万年前
魚類が急激に進化し、シーラカンス、肺魚等の硬骨魚類が繁栄。
紫外線を防ぐ安定したオゾン層が形成され生物は陸上に進出。シダ植物や両生類が出現。
生物の大量絶滅。
石炭紀
3億6000万年前
木性シダやトクサ類などの巨大な植物が各地で大森林を造る。昆虫や両生類が繁栄。裸子植物が出現。
この時期、パンゲアと呼ばれる超大陸が形成されていた。
ペルム紀
(二畳紀)
2億8600万年前
爬虫類、裸子植物が繁栄。
造山運動により、日本列島の骨格をなす部分が作られた。氷河時代。
三葉虫、フズリナなどの生物の大量絶滅が起こる。(約2億5000万年前)
中生代 三畳紀
2億4500万年前
新しい型の生物が進化。サンゴ礁が発達しアンモナイト、爬虫類が繁栄。
生物の大量絶滅。(末期)
開田村で見られる基盤岩類の砂岩・泥岩・珪質泥岩・チャートなどが深海底で堆積(約2億4000万年前〜約1億3500万年前)
ジュラ紀
2億800万年前
陸上では恐竜、翼竜、海では魚竜、首長竜などが繁栄。鳥類・哺乳類が出現。
超大陸パンゲアが分裂を始める。(約2億年前)
白亜紀
1億4400万年前
被子植物が出現。大型恐竜(竜脚類)絶滅。鳥盤目の恐竜が繁栄。恐竜、アンモナイトなどが絶滅。
新生代 第三紀 ..



暁新世
6500万年前
メキシコのユカタン半島に巨大隕石が衝突。
(約6500万年前)
哺乳類、鳥類、被子植物が多様に進化。 地殻変動も激しかった。
上松苗木花崗岩。
(約6000万年前〜約5000万年前)
始新世
5650万年前

キツネザルなどの原始的霊長類が出現。
(約5000万年前)
3800万年前には、現存する哺乳類のほとんどが出現していた。

斬新世
3540万年前
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中新世
2330万年前
花をつける植物が出現。
鮮新世
520万年前
人類の祖先、猿人が出現。(500万年前)
第四紀 更新世
180万年前
地蔵峠火山岩類の噴出。(約100万年前)
第一期(古期)御嶽火山の活動
(約80万年前)
原人出現。(約50万年前)
日本列島に人類が住み始める。(約50万年前)
旧人出現。(約15万年前)
氷河時代。約10万年前〜約1万3000年前
第二期(中期)御嶽火山の活動。
(約10万年前)
新人出現。(約3万年前)
第三期(新期)御嶽火山の活動

(約2万7000年前)
第四期(新期)御嶽火山の活動
(約2万年前)
旧石器時代。(約1万2000年前以前)
中石器時代。(約1万2000年前〜約1万1000年前)
開田村、柳又遺跡。
約3万年前〜約1万年前
完新世
1万年前

新石器時代。
開田村の縄文遺跡
(約1万2000年前〜約4000年前)古屋敷遺跡、大原遺跡、管沢遺跡、西又・駒背遺跡、中沢遺跡、髭沢遺跡、この他村内いたる所で出土品あり。

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現在

1979年(昭和54年)10月28日午前6時前後、御嶽噴火。(水蒸気爆発)
火山灰の研究から1979年以前の6000年間には、4回の水蒸気爆発が起こっていたことがわかっているそうです。

【注記】
この年表は様々な資料を参考にして作成しましたが、なにぶん専門的な知識も乏しく趣味の範囲ですので、最新の情報とは相違する点や間違った部分があるかもしれません。
また、本ページ「ジオ・開田」の内容は『開田村誌』をもとに掲載いたしましたが、必ずしもこの年表と一致していない部分もあります。悪しからずご了承ください。

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次へつづく


この内容は、長野県木曽郡開田村役場編集『開田村誌』を元に、旧開田村の許可を得て編集しています。
内容の無断使用・転載等を禁じます。



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