ジオ・開田

☆ 開田村の地質・1 ☆

開田村の地質概要
開田村の地質をおおざっぱにいえば、御嶽山から噴出した熔岩が古生層の地層をおおい、熔岩におおわれない地域には古生層の地層がひろがっています。

少し分解してみれば、

継子岳熔岩が新高国有林の一部からヤケノ国有林にひろがり、
三ノ池火山熔岩が新高国有林に押し出し、
摩利支天火山新期熔岩が恩田原から池之越・管沢にひろがり、西野川・西又川・冷川の川流に沿って段丘層をなし、
柳又から把之沢の入江以南、藤屋洞・中沢・馬橋・鱒淵・角塚里・古屋敷に亘って、再び摩利支天火山新期熔岩におおわれ、
そのほか関谷峠から北東に向かう尾根通りの一部、西野峠から城山に至る尾根通り、及び地蔵峠から木曽福島町と三岳村の町村界合戸峠に及ぶ 細長い尾根通りにかけて、地蔵峠安山岩がひろがっています。
そして、これらの熔岩におおわれない地域には古生層の地層が顔を出しています。

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開田周辺図
【開田村と周辺の図】

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開田村の地質の生いたち
御嶽火山活動の開始以前
地質学者達は、いまから百万年程前御嶽火山がまだ活動をはじめない新生代の第四紀のはじめ頃、この地方で最初の火山噴出が起こったとして、そのときの噴出物を地蔵峠火山岩類と呼んでいます。
噴出地点については、木曽谷第四紀研究グループの調査では、開田村と南安曇郡安曇村・岐阜県大野郡高根村の境界にある鎌ケ峰附近ではないかとされています。

開田村を北から南へと流れているいくつかの小さな「やまなみ」、即ち長峰峠、関谷峠、藤沢峠、西野峠、地蔵峠等の「やまなみ」は、すべてこのときの噴出物の堆積した上の凹部を流れるいくつかの河川によって縦断されて出来たものとされています。
そしてこの地蔵峠火山岩類が堆積して出来た山嶺面を地蔵峠嶺面と呼んでいます。
地蔵峠火山岩類はおよそ150m以下の概して一様の厚さをもって、開田村・三岳村・木曽福島町・王滝村・上松町に亘る広い地蔵嶺山脈をおおって分布しています。
さてそれでは、この地蔵峠火山岩類の下地はどうなっているか、また、この噴出がおこる前の地形はおよそどんなようであったかについて、島田安太郎著「木曽谷の地質」より関係部分を引用させていただきます。

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地蔵峠2 地蔵峠1
【地蔵峠/頂上付近の岩】

地蔵峠3
【地蔵峠/唐沢の滝上の岩】
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『さらに地蔵峠火山岩類の下位には、基盤表面に山砂利様の礫層をはさむことがあり、各所で砂礫層が知られている。この礫層は安山岩礫を含みおそらく地蔵峠火山岩類と整合関係にある礫層で、諸事実から泥流の堆積前における地表の起伏がかなり小さかったことがわかる。火山岩類の表面が1,700mを超える高さになる場合は、おそらくこの火山岩類が、地蔵峠より高い地形面から噴出したためであろう。地蔵嶺面の低い部分では、河成礫層が火山岩類の下にあることから地蔵嶺面上のかつての起伏分布が想定される。従ってここに地蔵嶺礫層基底面と呼ぶものは、1,400m〜1,600m面が若干開析されてできた高度1,000m〜1,200mの分布がやや局限された小起伏面であるらしい』

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採石場
【地蔵峠/登る途中の採石場】

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要するに、いまからおよそ100万年程前に起こった火山爆発の噴出物が堆積して、その凹部を北から南へ流れるいくつかの小河川が、長峰、関谷、西野、地蔵の各峠につらなる「やまなみ」をつくり出す以前のこの村の地形は、いまよりもっと起伏の少ないなだらかな高原であったもののようです。
このような状況を地質学では準平原と呼び、この時期を準平原時代といいます。
そしてこの噴出によって出来た地蔵嶺礫層は現河床からの比高が300mも高いところにあるので山砂利とも呼ばれています。

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次へつづく


この内容は、長野県木曽郡開田村役場編集『開田村誌』を元に、旧開田村の許可を得て編集しています。
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