開田方言辞典・その8

☆ その歴史的背影や地方的関連 ...開田方言/単語辞典 8 ☆

*音声については、主に末川地域のもの
単 語
意 味
使 用 例
★ 音声 ★
コイ
コキ°
(※ °は鼻濁音)
肥。特に厩肥。コイル・コキ°ルはともに田をこなす荒起こしの耕土を砕くの意味。コキ°ッタあとフマセルは、田をこなしたあと緑肥を馬に踏みこますこと。 厩から肥を運び出す マヤカラ コキ° ダス
コイ
コリ
これ。コイデモはこれでもの意。コイツは、これの強調した言葉。 これは何ですか? コリ ナニ?
コイベ 今夜。「今宵夜(こよいべ)」がつまってコイベに(木曽の方言より)
コーベも同意味。ヨーサは一般的な「夜」の意。
今夜会う コイベ アウ
コー 来い。コッチ、コウ−−−こちらへこい。(クヮーとも言う) あなたがこちらへ来て下さい ワレ コッチ クヮー
コエル 太る。コエスギル−−−太り過ぎる。 食べ過ぎで太る クイスギテ コエル
コエー 恥ずかしい、てれくさい、体裁が悪い、困った、等の意味。飛騨各地でしよう。(コワとも言う)「怖い」とは違う。
怖い−−−おそろしい、はオッカナイ。オッカネ。
あー恥ずかしいなー。 アー コワ ナー
コナス 仕事をコナス・・手際よく仕事を「片付ける。」
人をコナス・・・・人を「けなす」
二通りの意味。
ココラ この辺。(コゴラという用に濁っても言う)
ココズラ・・・・この辺でしょう。(西野)
ココラヤン・・この辺でしょう。(末川)
この辺で見た。 コゴラ デ ミタ
ゴーソ 馬粮の秣。ゴーソビヤは秣を入れるところ。ヒヤは庇屋・ひさしでかけ出してつくったところの意。
コシャル つくる。こしらえる。コセル(末川・把之沢)も同意味。 夕飯を作る。 ヨーメシ コセル
コスク 叱る。悪口を言うという意味もある。主として目上の者が目下の者を叱るときに使う。ヒッコスカレタなどの言い方もある。コスクは庄内(浜荻)にも残る日本の古語の一つ。 コスイテは叱って。コスカレタは叱られた。 騒いで叱られた。 サワイデ コスカレタ
ヲゴル 叱る。立腹する。同じ「叱る」でもこれは腹をたてて叱ること。
立腹して帰って行った。 ヲゴッテ カエッテッタ
コシキ 嬰児籠。もう一つは、豆や米をふかす道具もコシキという。万葉言葉のコシキはふかし器の方。
コゼル 異議をいう。かくらんする。こじる。古事記に「根こじにこじて」とあるように、梃子作用を利用することを言う。
「すねる」「押し分ける」の意味もある。
スッコジルなど、飛騨・美濃でも使う。
コヅク つつく。
ゴッツオ 御馳走。 ご馳走になった。 ゴッツオー ナッタ
ゴッボ ごぼう。ゴンボも同じ。
コッダケ これだけ。 もう、これだけだよ。 ヘー コッダゲ デョー
ゴウマンゾ あけびの花。ゴウマンジョも同じ。(把之沢)
コズム 沈殿する。粉炭・木屑にかぎらず。こまごました屑はみなコズミ。コズミはみんな下に沈む。
コズミを動詞化したものがコズム。
コクソ 蚕糞。コナクソも同じ。
コビリ 陽のながい作業のつらいとき、三度の食事の間に腹ごしらえのため軽くとる食事のこと。コブリも同じ。
ゴミ 塵芥のゴミではない。「ぐみ」のこと。ゴ音が高い。 ぐみを採って食べる。 ゴミ トッテ ク
コンダ この間。 この間会った コンダ アッタ
コマ 牡馬。コマはもと小馬で馬一般だった。西野の駒背も古くは小馬背と書いた(考古学書)。それが、いつしかいきおいのよい牡馬を駒と呼ぶようになった。


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