開田の方言辞典・その1

☆ その歴史的背影や地方的関連 ...開田方言/単語辞典 1 ☆

開田村の方言について、おおよそのまとめをします。

  1. 開田村の方言のなかには、室町時代又はそれ以前の古い日本語が残っており、その語源を調べれば古くは万葉にまで由来するものがあること。
  2. 1つ1つの単語についてみれば、飛騨から西方との共通性が強く、又母音の「エがイェに」「オがヲ」にの変化が室町時代の中央の標準的日本語であったこと 及び否定の助動詞「ン」が西部方言であることなど、西方の影響が強い反面、またカ行・タ行に「なまり」のある発音など東部方言の影響も少なくないこと。
  3. これらの言葉は、それぞれ古い時代に、あるいは飛騨街道を通じて、あるいは中仙道を通じて入り込んだものが混然としていまに伝えられたものでしょう。

方言をほりおこし、古い文化の歴史を辿ることは今後もひきつづき大事な課題となるでしょう。

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ではこれから、開田村に残る方言の1つ1つの単語について、その歴史的背影や地方的関連を解明していきます。

*音声については、主に末川地域のもの
単 語
意 味
使 用 例
★ 音声 ★
アシヤ(西野)
アセ(末川・把之沢)
朝食 朝食を食べましょう アセ クヮンカ
アカシ 灯台のこと
アカアシ 素足
アガリー 明るい まだ明るいなぁ マンダ アガリーナァ
アサコビリ 朝食と昼食の間の中食、コビリは小昼
アサイガタ 朝がた それは朝方だった ソリハ アサイガタダッタ
アサギ 朝 アサイの訛もある。
アガンコ(西野)
アララギゴミ(末川・把之沢)
あららぎ(いちい)の実。 末川ではアガミともいった。
アカバラ(全村)
アカベロ(末川の一部)
いもり いもりが居る アガベロ イテョー
アガヨバリ 大声で叫ぶこと 大声で叫んだ アガヨバリシタ
アイグ 歩く。
雲迷いの星のアユグと見えつるは、蛍の空に飛ぶにぞありける。(拾遺集巻七)
思ひかねあくがれ出て行く道は、アユグ草葉に露ぞこぼれる。(千載集巻七)
これらのアユグが、 アイクに転化。
よく歩くなぁ ヨー アイグナー
アイベ 歩け。歩きなさい。行きなさい。行け。などの意。
北飛騨に多い。エベ。アベなどの訛もある。
速く歩け ハヨ アイベ
アイバシテ 遠いところをわざわざ歩いてきてくれてご苦労様でした。
有難うございました。見舞いや会葬への御礼の言葉によく使う。
見舞いをうけたときなど「アイバシテ ワリイカッタヨ」などと礼を言う。
わざわざ来てもらって悪かったね アイバシテ ワリガッテョー
アイテ 会いたい。
「あっ痛い」というときもアイテという。
使い場所によって意味も違う。
会いたいなぁ アイテナー
アイデモ あれでもの意。 あれでもさぁ アイデモサー
アイナク 間もなく
アイマチ(西野・把之沢)
エーマチ(末川)
あやまち。怪我。
「アイマチ シテエ...怪我をしまして」など。
アイサ 間(あいだ) 間にやる アイサニ ヤル
アキブ(西野)
アキビ(末川・把之沢)
あけび。開肉の転。避けて肉をあらわす義(大言海) あけび採り アギビトリ
アクシヤシタ(西野・把之沢) あきあきした、もてあましたの意。「飽く」こと。
北佐久小海では、アクセーシタ。...末川も同じ 。


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