開田高原って本当はこんなとこ・・・第12話

昔を思い出す、最近の開田の話

そばと言えば・・・(その1)ちょっと淋しい開田の事情
近年改装して綺麗な店構えになりましたが、開田村に、もう何十年も前から営業している食堂があります。
以前は、少し色褪せた看板を見落とすと、通り過ぎてしまいそうな店でした。
いわゆるドライブインで、ご飯物の他、そば、うどんなどの麺類もあり、皆ごく普通の値段でした。
しかし、そばは開田産のそば粉を使用しており、そば打ち上手と評判のおばちゃんが打った、正真正銘の開田の手打ちそばだったので、一部の観光客の間では「知る人ぞ知る本物の開田そばが気軽に食べられる店」だったようです。

実はこの店、ワタシが知る開田村の人間の間では「うどんがうまい」と評判の店でもありました。
ところが、昨今のそばブームのせいでしょうか、改装した頃からメニューも少し変わり、うどんが無くなってしまったそうなのです。
某そば工場に勤める私の友人は、「あそこの肉うどんはうまかったのになー」と、とても悲しんでいました。

開田村には、うどん好きも結構多いです。
そば打ちの図


そばと言えば・・・(その2)お手軽そば
入手のススメ
昔は、大体どこの家にもそば粉があり、そばは自分の家で打つのが普通でした。
また、近くに製麺工場も無かったので、地元の商店などで生そばを見かける事もありませんでした。
最近は、近くの商店やスーパーでも開田村や近隣の市町村の製麺工場で製造された生そばが出回っています。
今までにそのほとんどの製品を食べましたが、ワタシの個人的味覚では、都会のスーパーなどで買う物と比べると、美味しいと思います。
ただ、付いているそばつゆは都会風なのか、ワタシにはどれもちょっと甘過ぎるので、適当に味を調整して食べました。

もっとも、味は人の好みなので一概には言えませんが、そばの産地で売っているくらいなので、それなりの味と値段でないと売れないと思います。
地元のそばに近い味を安価で味わいたい場合は、地元の店で生そばを買うのは良い手かもしれません。

かいだそば
開田のそばも売っています

身を持って知る「グローバル化」の話

開田には方言があり、昔から開田弁と呼ばれています。

小学生の頃、若くして赴任した担任の先生に開田弁が通じず、意思の疎通が難しい事がしばしばありました。
家での事とか友達同士の事とか聞かれて開田弁で答えると、先生はよく分からない言葉などを「どういう意味か?」と、また質問するのです。
こちらとしても、開田弁は日常生活で普通に使っている言葉なので、他にどんな風に言ったら理解してもらえるかなんて、考えた事もありません。
仕方ないので、身振り手振りを交えたうえに、皆でよってたかって更に開田弁で説明したものでした。

TV番組でよくある、世界の秘境ドキュメントものを思い出してみて下さい。
わけがわからずとりあえずニコニコしているレポーターを、地元の子供が取り囲んで、じたじたばたばたばた、あーだこーだと騒いでいる図。
・・・状況としては、そんな感じです。

今から思えば、大人も子供も訳の分からない言葉を喋っていて、よそから赴任した先生は、今よりもっと苦労した事でしょう。
それから数十年、開田村も過疎化が進んでしまい、子供の数がかなり少なくなりました。
そして「最近の開田の子供は開田弁を喋らなくなった」と、小さな子供を持っている知人に聞きました。
観光地化で、大人も開田弁以外を話す機会が増えたり、テレビやゲームなど周りの影響もあるのでしょう。
更に子供の両親とも開田生まれという家庭も少ないようなので、仕方のない事なのかもしれません。

学校は、開田弁以外の言葉に占領されつつある様です。
なんだか寂しい・・・。

教室の状況は・・・

子供にとってあたり前だから
開田弁の説明は
ちょっと難しすぎた・・・


『ブランド・ビレッジ』って??

子供の頃木曽福島の町に行く時には、イッチョウラ(一張羅)の服を着て、綺麗に身支度をして出かけていました。
そして町に着いたら、なるべく開田弁は喋らないようにして、「開田村の人間」と、さとられないようにしていた気がします。

その頃の開田村は、幹線路から外れて文明社会から取り残された「山奥の村」という感がありました。
開田村の人間は、他所に出ると、少なからず劣等感を感じる人が多かったのではないかと思います。

最近の話です。
ある時、木曽の宣伝チラシか何かに「木曽を代表する風景」という題で、開田村で撮影された風景写真が紹介されていました。
確か記憶では、開田村は「木曽のブランドビレッジ」ともうたってあったと思います。
なんとも、昨今の開田高原の評価の高さには複雑な気分です。

こんなイメージ?

御嶽山の絵
Kiso Brand Village

 


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