開田高原って本当はこんなとこ・・・第5話


またまた、秋の昔話を・・・。

どうしても誰かに聞いてもらいたいヒトコト
懐かしい昔話の前に、言わせて下さい。

近頃は、本屋さんにならぶ旅行ガイドの長野ものにも、開田高原が登場することが多くなりました。
一昔前なら、木曽といえば木曽路・・・というもんで、街道沿いの宿場案内が定番でした。
開田の「か」の字もないのが普通でした。

ある日、感慨深げにそのようなガイド・ブックを手に取って見る事がありました。
いや、感慨深かったはずなんですが、おかげ様で、大笑いする事になってしまいました。
いろいろな事情はお察ししますが、どうしても一言、言わせて下さい!!

近畿日本ツーリスト様、
そちらでシリーズ化してらっしゃる『ツーリスト情報版』っていうムックの191番ですけどね。
『NAGANO信州』ってタイトルだったと思います。
P.102の木曽路の紹介に、開田高原も紹介して下さってるようなんですが、下の方にある写真!!
「愛敬のある顔をした木曽馬達」って説明してる写真ですが・・・・

それ、牛です・・・

笑えたけど、ちょっと恥ずかしい事になってますよぉー。

牛です
高原の秋は自然の恵みでいっぱい!
初夏から秋にかけての野山には、食べられる物がいっぱいです。
学校帰りや休みの日には、食べられる物を求めてよく歩き回っていました。
だからと言って、決して特別な事情があって家が貧しくて、いつも腹を空かしていた・・・というわけではありません。
ただ、採って食べるのが好きだっただけです。

名前は忘れてしまいましたが、幾つかの花の蜜を吸うのから始まり、いたどり、野いちご、桑の実、いちいの実、はだんきょ、もも、すもも、ごみ、小なし、梨、あけび、栗、山ぶどう、くるみ、などなど。
まだ他にも何かあったかもしれないなぁ。
(内緒の話だが、この他に畑で栽培されている物が加わる場合もあった。)

その場で食べるのが普通で、いちいち持って帰ったりはしませんでした。

御嶽山と草原
はだんきょの思い出
ワタシの家から2キロ位離れた所にじいさんの家がありました。
裏に大きくて立派なはだんきょの木があり、毎年沢山の実が成っていました。
(※ はだんきょをご存知ない方へ・・・ようするに、すもも [プラム] です。)
あれはなんの日だったか忘れましたが、じいさんの家に親戚が皆集まっていました。
はだんきょの時期だからお盆だったのかもしれません。
木の下に沢山の実が落ちていたので、兄弟やいとこらと拾って食べていました。
確かまだ小学生低学年だったと思います。

下に落ちている実は、傷が入ったり、潰れたり、または虫の喰っている物も多かったのです。
もっとも、多少虫が喰っていても虫を引きずり出して、その部分だけ噛り取って吐き捨てた後、喰われていない部分をしっかり食べさせていただきます。
ふと上を見上げると、木に沢山成っている実は傷も無く、とてもうまそうに見えます。
登って採るにしても木は大きすぎるし、実は枝の先の細い所についています。
とっても大変で危なそう・・・。
そこで下から棒っ切れや石を投げて落として採って食べる事にしました。

はだんきょの絵
この作戦は大成功!
気のせいかもしれませんが、木に成っている実の方が虫に喰われている確率が低いと思いました。
はだんきょを採る為に夢中になって投げていると、木と家が近いのでどうしても勢い余って、じいさんの家の屋根、壁、ガラス窓などに棒っ切れや石が当たってしまいます。
そのうち、じいさんがカンカンに怒って飛び出して来て
「この、たーげぼー!」(開田弁)
と怒鳴りながら、ワタシらに向かって幾つも石を思いっきり投げて付けて来ました。
こりゃ大変だ!と、皆で一目散に近くの山に向かって必死になって走り逃げ込みました。

幸い誰も石には当たりませんでしたが。
それにしても子供に向かって本気で石を投げ付けるとは!
それもじいさんからみれば孫なのに・・・。

昔のじいさんは怒ると本当に恐ろしかった!
もう何十年も前に亡くなったが、囲炉裏を前にして着物姿でキセルをふかしていたなぁ・・・。

じいさんの記憶

あけびの思い出
小学生の頃のある日曜日。
いつものように友達と三人くらいで、山の恵みを頂こうと歩き回っていると、野原の奥にあったワタシの家の蕎麦畑の脇に、あけびが群生している場所を発見しました。
ちょうど食べ頃のあけびの実が、数えきれない程成っています。
思い思いの木に登って食べ始めました。
いちいち木から降りるのも面倒なので、木から木へ乗り移りながら更に食べまくります。
確か皆で百個以上は食べたと思います。
半日位はそんな状態で木の上にいました。

今から思えばまるで猿です。
しかし、その時程あけびの実が沢山成っている光景に、その後あっていません。

あけびの絵

桑の実の思い出
中学生の頃の夏、家庭科の授業でジャガイモやゴボウ等の野菜を作っていました。
グランドの横のその畑に行く途中に、桑の木が何本かあって実が成っていました。
畑の観察や世話のついでに立ち寄っては、友達数人でつまみ食いをしていました。

ある日ちょっと遅くなってあわてて教室に戻ると、
「途中で何か道草を食っていなかったか?」
と先生に問い正されました。
これはまずいと思い、手を後に回して果汁で染まった指先を隠しつつ
「畑に行って来ただけで、別に何もしていません。」
と嘘をついて、とぼけました。
うまく誤魔化せたと思ったら、
「じゃあ、全員舌を出して見ろ。」
と言われ仕方なく舌を出しました。
皆とっても濃い紫色の舌をしていて、弁解の余地など無く、すぐ桑の実を食っていたのが発覚してしまいました。

それ以来、放課後までは食べに行くのをやめました。
桑の実の絵


「ぼ」供の舌


 『第4話』に戻る   『開田生活秘話』の目次へ戻る   『第6話』も読んでみる