開田高原って本当はこんなとこ・・・第8話


近頃開田者が驚いた話 <その1>

本当にあった話らしい
ある日の信濃毎日新聞のオンライン・ニュース。
群馬県から長野県内の高原にわざわざやって来ては、そこに自生している貴重な高山植物を何度も盗掘していた主婦が捕まった・・・という情けない記事を目にしました。
なんでも、あまりにも悪質だったので、逮捕という事になったらしい・・・。
昔から、高山植物は平地に持って帰っても育たないので、普通は枯れてしまうと聞いています。
どれが珍しい高山植物なのかというような知識は持っているのに、どーしてそこまで考えられないのだろうか?と、思わず首をひねってしまいました。
(運良く育ったからといって、勿論それは誉められたことではありません!)
それに、元の環境と違った場所で育っても、結局は違った物になってしまうと聞いた事があります。
リンドウの色が成長過程で浴びる紫外線量の関係で、平地と高原とでは鮮やかさが違う、というのは有名な話らしいですが・・・。

とにかく件の盗掘主婦逮捕のニュースは、驚いた話でした。
「とる」のは、写真だけにして欲しいもんです。

松虫草・絵

開田者、一抹の不安・・・
偶然その後、女性の著者による開田高原を題材にしたエッセイが入っている本がある事を知り、早速読んでみたのですが・・・また驚きました。
エッセイと一緒に、ふんだんに摘んだ忘れな草を麦藁帽子に差した写真や、川岸にびっしり生えているクレソンの写真が掲載されています。

文中には、開田高原には桔梗やクレソンが群生し、「取り放題」と書かれていました・・・。

ご本人はそういう本を作るのは職業で、当然、許可を得た場所で採取したのでしょうけれど(まさか違うなんてことは・・・いや、そんなはずは・・・うわーっ!恐ろしいから考えるのはやめよう・・・)、前述のニュースを読んだ後だったので、あの主婦の様な人々が、こういう文章を読んで誤解しないだろうか?・・・と、危惧してしまったわけでした。

忘れな草・絵

田舎の山の基礎知識
開田の野山には、多くの私有地があります。
開田に限らず日本の土地には、必ず「所有者」というものが存在します。
それは、個人や団体だったり、国や自治体だったり色々ですが、とにかく「持ち主」がいることは確かなんです。

開田の私有地の野山は、代々そこの家の人が労力をかけて守りながら、受け継いで来た物です。
当然、それらの土地にはいくらかの税金もかかります。

水芭蕉・写真

近頃「日本中どこでもお馴染み」の山の問題
開田も例外じゃありませんでした・・・悲しいことに・・・。

山菜やきのこ、山野草の採れる季節には、本当に信じられないくらい沢山の人々が、各地から開田を訪れます。
それらの山菜・きのこ・山野草はまた、土地の人にとっても季節の楽しみの一つでもあります。
自然の恵みですから、「所有者や地元の者以外は採るな!」などとは言いません。
ただ、明らかに自分達で食べたり鑑賞したりするとは思えない程大量に採っていく人達を見かけると、かなり疑問を感じます。

ちょっと度が過ぎてません???

都会で他人の土地(庭だってそうです)から何か取ったら、ずいぶんと問題になるでしょうに、田舎なら誰の土地でも、何をいくら採っても平気だと思っているのでしょうか?

おまけに、ゴミを捨てていく人やら、畑などを踏み荒らしてしまう人までいるんですから・・・世の中どーなってるのか、さっぱり分かりません。

開田のある山では、山つつじの盗掘で、山が穴だらけになってしまったと聞きました。
山の地面に穴が開くぐらいなんだっていうんだ?・・・と思う人もいるかもしれませんが、ある日朝起きたら、家の庭に誰かが何かを持って行く為に開けた穴が、ぼこぼこ開いていた・・・でもまあいいや気にしない、なんて話を聞いたことがあります?

じこぼう

もっと切実に困った事もあります。

木曽の山には、特にひのきなどの木を植林してある事が多いのですが、そんな事はお構いなしに山に入る人達がいるわけです。
踏まれてしまった苗木や若い木は、枯れてしまう事があります。
楽しみの山菜が食べられないだけでなく、この様な実害が出ると、もう、しゃれになりません。
建築材や商品になる木材ですから、実際のところ被害はかなりの額になるでしょう。

・・・でも誰も補償してくれません。

リンドウ&われもこう・絵
ボヤく事情
上に書いた様な事をする人達は、今や1人、2人ではないのです。
それが、社会派でもない一開田者のワタシがぼやいてしまう所以です。

最近は開田でも、「私有地に付き入山禁止」とか「山菜取り禁止」とかの看板が、増えてしまいました。
見た目も感じが悪く、十分景観を損ねていると思います。

昔はそんな看板はありませんでした。

事情を知る開田者は、だだ単純に「開田の地主共はケチ臭い」などと思わないで頂きたいと思ったのです。
あんな看板が立つには、それなりの経緯があるのです。

ワタシは、この様な看板がこれ以上増えない事を望んでいます。
立看板


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