開田者の驚き・・・第9話


近頃開田者が驚いた話 <その2>

そば・・・開田の一般家庭の場合
ワタシはどちらかというと、そばは好きな方です。
そばの産地(そばくらいしか出来ないとも言いますが・・・)という土地柄、子供の頃から 冠婚葬祭や来客のある時など、何かとそばを食べる機会は多くありました。

そば粉は自家製で、だいたい母親がそばを打ちます。
汁は、スンキまたはキノコで出汁を取った物で醤油味です。
食べ方は、ほとんどの場合とうじそばで、翌朝は残ったそばと汁を一緒の鍋で温めて食べます。
そば畑と御嶽
ワタシのウチで打つそばは、そば粉に生卵一つと水を入れた物です。
コシもそんなに強く無く簡単にぶちぶち切れるので、短い物も混ざっています。
とうじる時に、あまり長時間温め過ぎると溶け始めます。
それを、スンキを使った酸っぱい汁にとうじて食べるのが大好きなのでした。
(※ 「すんきそば」のページをご参考までにどうぞ。)

ただし、スンキを食べない地方のほとんどの人は、「まずい!」と言います。
世のそば通の方などは、ひっくりかえる様なシロモノかもしれませんが、子供の頃より慣れ親しんだワタシにとっては、好みの味の一つなのです。

ちなみに、ウチではそばをもりそばの様に冷やしてつゆにつけて食べた事はありませんし、そば湯も飲みません。
日常茶飯事に作るそばの茹汁まで飲んでいた日には、かえって健康を害します・・・。
そばの実(絵)

そばの実
おもてなしの場合
開田以外から客人の来る時は、だいたい二種類の汁を用意しておきます。
ちょっと食べてもらって、スンキが苦手な人にはキノコ出汁のそばを出します。
キノコは山で採った物と自家栽培の物を使います。
客人にはキノコ出汁の汁の評判はとてもいいです。
そばは柔らかくて短かいので、好みが分かれる様です。
そばと同時に、うどんを用意する場合もあります。

そば立て

そばたて
なんかの妖怪みたい・・・

うどんもそばと同様に、とうじて食べる事が多いのです。
子供の頃はおやつ代わりに、茹でてあるうどんに、醤油と酢と味の素で味付けをして食べる事もありました。

そういえば、開田にはそばがありふれているせいか、そばよりうどんの方が好きという人も結構います。

そば粉を練った物を卵程度の大きさの塊にして、そばと同様の汁で食べる事がありますが、大きい塊の場合はあまりにもそばの味が強すぎて、私はどちらかというと苦手です。
そばの味や香りが本当に好きな方は、麺になったそばよりもこちらの方が好きなのでは?とも思うのですが、世の中で「そば好き」というと「麺が好き」な人に限定されるようで、ちょっと不思議です。
そば通って・・・
ところで近年巷では、そばがかなりもてはやされているとのこと・・・。

知り合いから聞いた話です。

ある日、そばが好きで各地を食べ歩いているという「そば通」を自称する人が、わざわざ開田にそばを食べに来たそうです。
その人は、評判が良くてテレビや雑誌などにも時々紹介されるある店で、手打ちそばを食べたらしいのです。
しかし、あいにく口に合わなかったようで、たまたま出会ったワタシの知り合いに、「まずくてまずくてしょうがない!あんなまずいそばを食ったのは初めてだ!」と言って、「口直しにそばを食べたいので、ちゃんとした店を知らないか?」と、たずねたらしいのです。

とはいっても、評判の店のそばがまずいと言っている人ですから、知り合いも困ったらしく、とりあえず一番近くにあるそば屋を教えました。
その店のそばはすごくおいしかったらしく、食べ終わってまたその人がやって来て、「やっぱり開田に来たかいがあった。」と礼を言い、満足して帰っていった・・・という話でした。
そばの花(絵)
まあ確かにそこの店のそばはしっかりとしたコシがあり、のどごしも滑らかでおいしいのですが、主に乾麺を作っている民間のそば工場直営の店で、オートメーション化された機械で作られた物です。
ワタシなどが知っている、いわゆる開田の家庭のそばとはかなり違った物なんです。

「そば通」と自称するその人が、その店のそばに満足したのには、正直少し驚きました。
「そば通」と言っても、色々な好みの人がいるもんだなー、と・・・。

食べ物の好みは、人によって千差万別、生い立ちによってもかなり違う事と思います。
何がうまくて何がまずいかなど、かなり意見がわかれるところだというのは、冒頭のワタシのウチのそばを想像していただければ、納得頂けるでしょう。

 

そば畑


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